しだれ桑 第54号より

モノづくりの誇りを礎に


日精樹脂工業株式会社 代表取締役社長 依田 穂積さん(S57年卒)

依田さんは、学生当時どのように過ごされていましたか?

在学中は吹奏楽班と美術班に所属、コンクールに向けての練習と木炭デッサンに明け暮れる毎日でした。委員会活動では図書委員長を務め、図書館にある哲学系の本を片っ端から読みあさっていました。週末は話題作が来ると映画館で一日を過ごすことも多く、不遜な言い方ですがこの頃は勉強することの意義や目的が見出せず、あれこれ逡巡しながら毎日を過ごすような学生でした。但し、この多感な時に感じ、悩み、体験したことが起点となり、今の自分が形作られていると感じています。

日本を代表するプラスチック射出成形機メーカーの代表取締役社長として大変ご活躍されていますが、依田さんの信念や、大切にしている価値観などを教えていただけますか?

私は血縁で代表取締役になれたと思っているので偉そうなことは言えませんが、創業者の思いや、この会社を発展させた技術は何だったのか、折に触れて歴史を振り返り、当時のビジョンと現在の競争戦略に齟齬がないかチェックしています。重要なのは過去を認めたうえで、変えていいものと変えてはいけないものを時勢に流されずに見極めることだと感じています。先人が培ってきたモノづくりの誇りを礎に、それに恥じない良いものを作ろうという気概は本当に大切だと思っています。

今年度、軽井沢でもG20会議が行われましたが、環境への思いや、社会貢献などのお考えがあれば教えていただけますか?

社会貢献といったイメージアップ活動ではなく、本業のど真ん中で、環境問題を解決する覚悟です。当社が関わっているプラスチックは、燃やせば地球温暖化、海に捨てれば波浪に粉砕されマイクロプラスチックとなり、海水中の有害物質と吸着し最終的には人間にまで及びます。今後、環境対応としてリサイクルの徹底や植物由来樹脂の活用を機械メーカーとして政府や工業会に働きかけグローバルで環境破壊や公害病発生を最小限に留めていく活動を展開してまいります。

今の東高校生にひとことお願いいたします。

在学中に絶対に負けない得意なことを一つだけ極め、胆力を強化することです。それが上田東の戦い方だと思っています。胆力は成功するためにやらなければならないことをする勇気と強さです。利口ぶって虚勢を張っている輩の常識に踊らされず、あらゆる困難を排除して自分たちの成功を信じて行動することです。胆力を鍛えれば、能力や経験がトップレベルに及ばなかったとしても長期戦で必ず勝機は見出せます。

日精樹脂工業株式会社代表取締役社長。1989年入社、1999年子会社のニッセイアメリカINC取締役副社長に就任、同年取締役就任を経て、2001年より代表取締役社長に就任。グローバルな視点に基づく市場戦略を展開し、中国、タイ、アメリカに生産工場を設立、現在は環境に優しいプラスチックの普及に向けての研究開発にも力を注ぐ。日本プラスチック機械工業会会長、長野県経営者協会常任理事、長野県職業能力開発協会会長、公益財団法人さかきテクノセンター理事長等を兼任し、日本のプラスチック機械産業、長野県経済・産業の発展に寄与している。

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