[信州大学学術研究院(繊維学系)教授]
高寺 政行さん(S52年卒)
ファイバーは、細くて長い材料のことです。ファイバーは織物や編物などテキスタイルとして、また様々な構造や複合材料として、アパレル用途だけでなく、航空機、自動車、メディカル、エネルギー、環境、土木建築など様々な分野に使われる先端的な素材として展開されています。私が勤める信州大学国際ファイバー工学研究所では、さまざまな機能・性能を有した「フロンティアファイバー」の創出、医学工学連携下での生物由来ファイバーやメディカル利用ファイバーの研究及びメディカルロボットとその制御技術の開発、ナノテク・ナノファイバー分野を融合して新しい機能を有するスマートテキスタイルの創出、技術革新により70億人の世界市場を対象としたファッションの創造を実現するための研究を推進し、国際的研究拠点となることを目指しています。
教育では先進繊維・感性工学科で、主として感性工学分野の教育と研究指導を行っています。生産中心、経済中心の社会が成熟化を迎えた1980年代から安全性や経済性などの実用性から感性がより製品に求められるようになりました。産業界や日本学術会議を中心に感性工学の必要性が提唱され、平成7(1995)年度に信州大学繊維学部に感性工学科が創設され、縁あって創設時のスタッフに加わりました。見て、触って、使って感じる価値を、繊維製品をはじめ、自動車や住宅、サービスなどあらゆる商品に対して感性の視点から高めようとする学問です。
大学では学部や大学院に毎年新入生が入学し、また、卒業・修了を迎えた学生が旅立っていきます。学業や研究を通じて学生の成長する姿を見ることや、社会に出た卒業生の活躍する話を聞くことが何よりも幸せなことです。
私の高校入学は上田東高校が完全普通科になった年です。職業科の名残の商業や農業の科目もあり、他の授業と違った面白さがありました。高校の勉強にはあまり熱心でなく、小説や科学の啓蒙書など本ばかり読んでいました。その習慣が、新しい知識を仕入れ、未来への課題を解決する今の仕事につながっているかも知れません。学校目標は「自由と責任」に加えて「変化対応」が加えられたと伺いました。変化に対応するためには、世の中を常に観察し、情報を収集し、変化の兆しを見つけること。その変化に対応するためには、基礎から最先端までの科学技術や、社会に関する知識が必要です。むろん一人ですべてを把握することはできませんので、それぞれの分野に長けた仲間が必要です。
生徒諸君には、今学ぶべきことをきちんと学び、その中から、自分にしかできないことを築いていって欲しいと思います。母校の発展と、在校生諸君の将来の活躍を願っています。
※テキスタイル:織物。生地。
昭和52年上田東高校卒、昭和56年信州大学繊維学部卒、現在信州大学学術研究院(繊維学系)教授、信州大学先鋭領域融合研究群国際ファイバー工学研究所所長、博士(工学)、日本感性工学会会長。
主な研究分野はテキスタイル、アパレルの設計・評価とファッションにおける感性工学の専門家として、情報メディア、家電、住宅機器等でメーカーの商品企画などで活躍。
長野県上田東高等学校
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